イリジウム加工技術
イリジウムは、耐蝕性・耐熱性・高温での強度において他の金属にない、非常に有用な特徴をもっています。これらの特性を活かし、イリジウムは極限環境に耐える優れた材料として、単結晶育成分野、電解電極、航空宇宙部材、医療分野、そしてグリーン水素製造などの次世代エネルギー分野でも注目を集めています。一方で、イリジウムは堅くて脆いという弱点も持っているため、加工性は非常に悪く、加工には特殊な技術が求められます。フルヤ金属において特筆すべき加工技術は、鉱山で産出されたイリジウムパウダーを溶解・加工し製品化する技術とリサイクルを中心とした高純度化技術を一体化し、高純度かつ精密な製品を製造する技術にあります。この2つの技術を持つメーカーは世界でも有数です。
フルヤ金属のイリジウム製品
当社の加工・精製技術を複合的に活用することで、様々なイリジウム製品を提供することが可能となっています。酸化物単結晶育成用のイリジウムルツボや、次世代の半導体メモリーなどに使用される高純度・高精度なイリジウムターゲット、イリジウムの0.1tの極薄板、酸化雰囲気で2000℃付近を測温できるイリジウム-ロジウム熱電対、有機EL燐光材・電解電極材料・水電解触媒に用いられるイリジウム化合物などがあります。また、これまで培った加工技術を活用し、様々な微細加工を行うことも可能としています。








イリジウム加工技術
イリジウムの鍛造・圧延工程においては、厳密な温度管理のもと、決まったサイズの板へ加工します。その後切削など各種加工を経て部品を製作し、溶接技術にて目的の製品に仕上げていきます。溶接は、自動化技術と職人による手溶接を取り入れています。イリジウムの融点は2400℃を超える為、イリジウムの溶接加工は他金属よりも特殊な技術が必要となります。当社では、長年培った高品質の溶接加工を強みとしています。そのほかにも、圧延加工や放電加工、細線加工、化合物の結晶化技術を保有しています。イリジウム化合物については、メタル量で年間約7トンの製造キャパシティをもつ設備を保有しています。



イリジウム溶解技術
先述の通りイリジウムの融点は2400℃を超えるため、溶解はプラズマ溶解炉等の特殊な溶解設備が必要です。プラズマ溶解炉は、超高温のプラズマ(5000℃以上)を用いることで、イリジウム中の余計な不純物を蒸発させ取り除くことができる設備です。当社では、ダブルメルティング法と呼ばれる溶解方法で高純度のイリジウムのインゴットを製作しています。また、近年ではEB(エレクトロンビーム)溶解炉を導入し、さらに高温かつ高純度化が可能な溶解手法も導入しました。これにより、高純度な製品を提供することが可能になっています。


リサイクル・高純度化技術
当社では、日本国内でもいち早くイリジウムの完全リサイクルのシステムを確立しました。イリジウムの原料は南アフリカの鉱山から採掘されますが、それらは総じて不純物が多く含まれ、一部材料はそのまま使用することができません。こうした原料は、当社で保有する各種分析装置で分析され、その結果、純度が99.95%を超えないものは精製ラインへ投入し、高純度化を実施しています。この高純度化ラインにおいて、卑金属や他のPGM(Ru・Pt・Pd・Rhなど)を定量的に低減することで、高品質なイリジウムの製品を提供することができます。不純物は、イリジウムルツボの製造工程、品質、寿命に加え、イリジウムルツボを用いて育成される単結晶の品質にも影響を与える為、最大限抑える必要があります。当社のリサイクルシステムは、イリジウムの高純度化および高品質なイリジウム製品を提供する為にも必須の技術要素となっています。
また、単結晶育成装置内で使用される耐火物や使用済み電極といったイリジウムの含有量が少ないものからのイリジウムの回収・精製も可能にしており、希少性のあるイリジウムの資源循環に貢献しています。
