対処すべき課題・事業等のリスク
対処すべき課題
当社の継続的課題としては、高付加価値製品の開発並びに原価低減の推進、貴金属の安定確保、環境・安全対策ガバナンス体制の構築等があります。
まず、高付加価値製品の開発並びに原価低減については、需要を的確に捉え、営業・開発・製造の各部門が一体となり他社製品との差別化・高付加価値化を図るとともに、製造工程を標準化し自動化並びに作業の効率化を進め、品質の安定を図ると共に、資産効率を高め原価低減を目指します。
次に、貴金属の安定確保については、貴金属回収技術の向上・新たな技術確立を図り貴金属回収能力増強のための積極的な設備投資を行います。加えて、田中貴金属工業株式会社や鉱山会社との緊密な取引関係の維持・強化を基本方針とし貴金属の安定確保に努めます。
また、当社は継続的な成長・発展と企業価値の増大を図るため、環境・安全対策に真摯に取り組むとともに、ガバナンス体制を強化し、コーポレート・ガバナンスの充実及び内部統制システムの円滑な運用を重要な経営課題と認識し鋭意取り組みます。
事業等のリスク
以下に当社グループの事業上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。
当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の予防又は回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、本株式に関する投資判断は、当サイト及び有価証券報告書の記載事項を併せて慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。
また、以下の記載は本株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありませんのでご留意下さい。
なお、当サイトにおける将来に関する事項は、2025年9月25日現在において当社グループが判断したものです。
業績の変動要因について
当社グループの業績は、携帯電話、液晶ディスプレイ、電子部品及び電子デバイス関連等の電子機器メーカーや半導体、光学ガラス及び触媒関連業界における設備投資動向及び生産活動の影響を受ける傾向があります。したがって、今後これらの業界動向が悪化した場合には、当社グループの業績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、米国の関税問題においては当社では大きな影響はありません。
貴金属の価格について
当社の製品の原材料は高価な貴金属が大半を占めており、また市場需要に機動的に対応し安定的に供給を果たすために必要な貴金属を保有していることから、種々貴金属価格の変動は当社グループの業績に影響を与えます。特に、プラチナグループメタル(PGM)のうち当社グループで取扱いの多いイリジウム・ルテニウムの取引価格は、主要な貴金属取扱業者の公表する価格を指標として決定されており、これらを主原料とする製品需要動向や投機的要因のほか、供給国及び需要国の政治経済動向、為替相場等、世界のさまざまな要因により、その価格は変動しています。また、プラチナやパラジウム等は国際商品市場で活発に取引されており、同じ要因によりその価格は変動しています。その価格の変動は直接売上高に影響するとともに利益にも少なからず影響を与えます。
これらのリスクに対応するため、当社グループは、海外鉱山会社と緊密な関係維持、原材料調達ルートの複線化、リサイクル原料の使用比率の向上に取り組む等、原材料価格の変動による影響の低減に努めていますが、全量に対する原材料価格変動リスクの回避は困難であるため、製造及び在庫期間における貴金属価格の動向によっては、価格変動が当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
貴金属の調達について
当社の製品は、産出地や生産量が限定されるイリジウム・ルテニウム等といった稀少な金属を原材料としています。当社では、原材料の調達リスクに備え一定の原材料在庫を保有しています。しかし、これら稀少金属の産出国における政治・経済情勢等の変化・法律の改正又は世界的な需給逼迫等により産出量・流通量が減少した場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を与える可能性があります。
為替変動の影響について
原材料及び製品の一部の輸出入取引を外貨建で行っており、また、海外連結子会社の財務諸表は外貨建で作成されています。したがって、当社グループは外国為替相場の変動に係るリスクを有しています。
外国為替相場の変動は、当社グループの輸出入取引に係る収益費用及び外貨建債権債務の円換算額に影響を与え、海外連結子会社の財務諸表の円貨への換算において当社グループの業績及び財務状態に影響を与えます。
当社グループは、外国為替相場の変動による輸出入取引に係る影響を軽減するため、為替予約及び債権流動化を行っていますが、為替変動の状況によっては、軽減の効果が十分に得られない可能性があります。
「主要株主」及び「その他の関係会社」の異動等によるリスク
田中貴金属工業株式会社は、当社の当事業年度末日現在の総議決権の17.32%を占めており、当社の「主要株主」及び「その他の関係会社」であり、同社の親会社である株式会社田中貴金属グループ並びに株式会社フィールドインアンドカンパニーも「その他の関係会社」に該当しています。また、当社は田中貴金属工業株式会社と資本業務提携契約を締結しています。
主要株主である田中貴金属工業株式会社の、当社の経営方針への考え方・議決権行使等が当社の事業運営及びコーポレート・ガバナンスに影響を与える可能性があり、同社または株式会社田中貴金属グループ並びに株式会社フィールドインアンドカンパニーが、当社の経営方針についての考え方や株式の継続保有方針について変更した場合には、当社の株価や業績及び財務状態、キャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
大株主との関係について
田中貴金属工業株式会社との関係について
当連結会計年度(2025年6月期)末日現在、田中貴金属工業株式会社は、自己株式数を除く当社発行済株式総数の17.29%を所有する大株主です。
取引関係について
当社は、2011年2月7日開催の取締役会において、田中貴金属工業株式会社との間でイリジウム地金の安定供給等を目的として資本業務提携契約を締結し、それに基づき、当社の主要原材料であるイリジウム等について、田中貴金属工業株式会社と仕入取引を行っています。同社からの仕入高及び総仕入高に占める比率と期末買掛金残高は以下のとおりです。
| 2025年6月期 | |
|---|---|
| 仕入高(百万円) | 166 |
| 総仕入高に占める比率(%) | 0.4 |
| 期末買掛金残高(百万円) | 132 |
また、田中貴金属工業株式会社への売上高及び総売上高に占める比率と期末売掛金残高は、次表のとおりです。
| 2025年6月期 | |
|---|---|
| 売上高(百万円) | 139 |
| 総売上高に占める比率(%) | 0.2 |
| 期末売掛金残高(百万円) | 23 |
以上のとおり、原材料の仕入及び製品の販売等において、当社は田中貴金属工業株式会社の持つ安定調達力や多様な販売ルートを活用しています。これは、同社の優れた調達力や販売力を活用することにより、拡大する工業用貴金属製品の需要に応えることができると考えるためです。当社は、今後とも同社との良好な関係の維持、取引の継続に努めていく所存ではありますが、同社との関係に変化が生じた場合には、原材料の仕入及び製品の販売量の変化等を通じて当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
人的関係について
資本業務提携契約に基づき、取締役候補として田中貴金属工業株式会社の常勤顧問落合一徳氏が推薦され、指名・報酬諮問委員会の答申、取締役会での選任議案承認、株主総会での承認を経て、社外取締役に就任しています。
独立性の確保について
資本業務提携契約に基づき、取締役候補として田中貴金属工業株式会社の常勤顧問落合一徳氏が推薦され、指名・報酬委員会の答申、取締役会での選任議案承認、株主総会での承認を経て、社外取締役に就任していますが、当社の経営上の決定事項について、同社や株式会社田中貴金属グループ並びに株式会社フィールドインアンドカンパニーの事前承認事項や事前協議事項はありません。
このように、当社は自らの意思決定により独立した事業展開を行っており、同社や株式会社田中貴金属グループ並びに株式会社フィールドインアンドカンパニーによって当社における事業活動や経営判断が阻害されるような状況は生じていません。しかしながら、前述のとおり同社とは重要な取引関係があることから、同社や株式会社田中貴金属グループ並びに株式会社フィールドインアンドカンパニーとの関係に変化が生じた場合には、当社の株価や財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
人材の確保及び育成について
当社が引き続き事業を拡大するにあたっては、貴金属加工にかかわる技術に精通した人材が不可欠であり、このような人材の確保と育成を重要な経営課題として捉えています。
当社としては、中途採用や新規採用を通じて、優秀な人材を採用していく方針です。今後とも採用活動の強化や教育・研修制度の充実に努めていく方針ですが、当社が必要とする優秀な人材の育成・確保が当社の事業展開に対応して進まない場合、あるいは、何らかの理由により人材が大量に社外流出した場合には、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
同業他社との競争の激化による業績への影響
当社が販売する製品のなかには、ルテニウムターゲット、各種ターゲット、熱電対及び理化学用器具等、競合が激しく、価格競争も厳しい品目がありますが、当社は、「競合を制して、極端な価格競争に勝つこと」を目標とはしておらず、顧客ニーズを第一に提案型営業を目指してきました。今後もこの方針に則り経営諸活動に注力しますが、結果として競合や価格競争に晒され、売上及び収益の低下により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
製品の開発等について
当社は顧客や外部機関等からの情報を分析することにより、製品のライフサイクルや市場動向の変化を見極めると共に、新製品及び新素材の開発、新市場及び新用途の開拓に取り組んでいます。しかしながら、市場動向について、当社が予想する以上の変化があった場合、又は当社においてこれら開発等の活動が見込みどおりに進捗しない場合、当社の製品は競争力を喪失し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
製品の品質について
当社の製品は、顧客より個別製品毎の仕様に基づく厳しい品質が要求されています。当社は、ISO9001に基づく製造プロセス管理及び品質管理システムを導入する等、品質の維持・向上を進めています。しかしながら、当社が顧客に納入した製品について、顧客の要求規格及び仕様等を充足しなかった場合又は不適合等が生じた場合には重大な品質クレームを引き起こす可能性があります。その際に、当社の製品に何らかの瑕疵が存在した場合には代替品の納入に留まらず、代金弁済や損害賠償、さらには取引(納入)停止等が生ずる可能性があります。これらの事象が生じた場合には、製品納入先との取引が停止するほか、当社の製品に対する信頼性が損なわれ、他の製品納入先との取引にも影響を及ぼす可能性があります。このような場合、特にそれが大口の製品納入先である場合には、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
生産拠点の集中について
当社は、1990年に工場を茨城県下館市(現 筑西市)のつくば工場に移転・集約して以来、一貫してこの地で生産活動を行っており、生産拠点の集中が生産活動の効率化に寄与してきたものと考えています。一方で、2007年12月に精製・回収の主力ラインとして土浦工場を、2010年10月に北海道千歳市に石英保護管内製化のための千歳工場を立ち上げたほか、2011年4月には土浦工場(第二期)を立ち上げ、イリジウム製品の回収精製ラインを増設しましたが、生産拠点の分散化は一部にとどまっています。今後、自然災害等の外的要因により生産活動の停止が余儀なくされた場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
事故による操業への影響
プラズマ熔解炉、高周波溶解炉など主要設備では高温、高圧での操業を行なっており、貴金属の精製設備においては大量の薬品類を使用しています。これらを原因とする事故の防止対策には万全を期していますが、万一重大な事故が発生した場合には、当社の生産活動に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
環境リスクについて
当社は、環境リスクに対して予防の大切さを認識し、つくば工場及び土浦工場においては、環境マネジメントシステムISO14001の運用を通じて、リスクの低減を図っていますが、自然災害、工場における設備の劣化、又は原材料、薬品の人的な取扱いのミス等により、薬品の漏洩等、環境へ悪影響を与える事象が発生する危険性があります。この事象が大規模なものとなり新たな費用負担等が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
知的財産に係るリスクについて
当社は、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し、自社が保有する技術等については特許権等の取得による保護を図るほか、他社の知的財産権に対する侵害のないよう、研究開発部門を中心に、顧問弁護士や弁理士などの外部専門家の協力を得ながらリスク管理に取り組んでいます。しかしながら、当社グループが現在販売している製品、或いは今後販売する製品が第三者の知的財産権に抵触する可能性を的確・適切に判断できない可能性があり、また、当社が認識していない特許権等が成立することにより、当該第三者より損害賠償等の訴えを起こされる可能性があります。そのような場合、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
借入金依存度について
当社は、原材料である貴金属の調達、設備投資等に必要とする資金を主として金融機関からの借入により調達し、当連結会計年度末の借入金残高は28,600百万円、借入金依存度は23.1%となりました。また、当社グループの売上高に対する支払利息の比率は当連結会計年度において2.2%となっています。今後、営業キャッシュ・フローの拡大から生み出される余剰資金や増資による資金調達により、財務体質の強化に努めますが、原材料である貴金属の仕入増加による借入金増加や、市場金利の上昇等があれば支払金利の負担増が生じ、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
また、借入金のうちには財務制限条項が付された借入があることから、将来において業績の悪化等により財務制限条項に抵触した場合等も含めて、新たな資金調達に障害が生じれば、事業の展開に影響を及ぼす可能性があります。
繰延税金資産に関するリスクについて
当社は、現行の会計基準に基づき、会社分類の妥当性、将来の課税所得の十分性、将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等を検討した上で繰延税金資産を計上しています。
この中で、特に原材料の精製回収費用に関連する繰延税金資産の計上については、将来の精製回収の実行計画に基づきスケジューリングしていますが、当該実行計画は将来の製品の受注や原材料である貴金属の国際商品市場価格に影響を受ける可能性があります。
また、当社グループの業績や経営環境の著しい変化等により、繰延税金資産の全部または一部に回収可能性がないと判断した場合や税率の変更を含む税制改正、会計基準等の改正等により、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの業績及び財務状態に影響を与える可能性があります。