トップメッセージ

デジタル社会の進展とグリーン社会への転換に貢献しながらさらなる成長を続けてまいります。デジタル社会の進展とグリーン社会への転換に貢献しながらさらなる成長を続けてまいります。
2023年6月期(第55期)の業績について分析をお願いします。
一部主力製品の大幅な需要減を他製品の伸びがカバーし、堅実に対応することができました。
第55期は一部の主力製品の需要が大幅に落ち込んだものの、他の製品の伸びがこれをカバーしました。コロナ禍が収束傾向に転じましたので、海外も含めて本来の営業活動を再開し、若手の人財開発の取り組みも進めました。
セグメント別の業績としては、電子は主要製品のスマートフォン向けのイリジウムルツボが大幅な受注減となりましたが、医療用シンチレーター向けイリジウムルツボの受注増やパワー半導体向け機材の新規受注でカバーすることができました。
薄膜はデータセンターへの新規投資の減速などにより、HDD用ルテニウムターゲットの受注が大幅に減少しました。その一方で、付加価値の高い次世代半導体(STT-RAM)向けターゲット材が量産に向けたテスト段階に入りました。
サーマルは半導体市場の旺盛な需要が継続するとともに、高付加価値製品へのシフトが進みました。半導体装置メーカーと共同開発した付加価値の高い製品のリピート受注が出始めました。
ケミカルは有機EL向け化合物、化学プラント向け化合物の受注が落ち込みましたが、電極用触媒と回収精製が好調に推移しました。
配当につきましては1株当たりの配当金を255円といたしました。
2024年6月期(第56期)の業績予測と取り組みを教えてください。
第56期は上期の厳しい状況を見据え、事業を堅実に進めてまいります。
第56期は、スマートフォン向けのイリジウムルツボやHDD用ルテニウムターゲット、有機EL向け化合物など主要製品の受注減継続により、上期はかなり厳しい状況になると見込んでいます。それら主要製品の受注は下期には徐々に回復していくと思われますが、その時期については慎重に考えており、通期の業績は増収減益を見込んでおります。
具体的な状況や取り組みとしては、電子はスマートフォン向けイリジウムルツボの受注減を、医療用シンチレーター向けイリジウムルツボやパワー半導体向け機材などがカバーしながら、高温高効率ガラス溶解装置の開発を進めていきます。
薄膜はHDD用ルテニウムターゲットの受注が下期には回復すると予想しています。次世代半導体(STT-RAM)向けターゲットは、引き続き量産体制の構築を進めます。粉末スパッタリング量産装置による広範な分野に向けたサンプル出荷を進めていきます。
サーマルは半導体関連分野の状況を注視しながら、高付加価値センサーへのシフトや半導体増産への対応、当社開発製品の投入に取り組んでいきます。
ケミカルは引き続き精製技術の向上と能力増強に取り組むとともに、リサイクル品目の拡大を進めます。有機EL燐光材向けイリジウム化合物は主な用途であるスマートフォンやテレビの出荷滞りによる厳しい状況が下期まで続くと予想しています。一方で研究開発は積極的に行い、ナノ合金量産に向けた取り組みと水素ビジネスへの対応を進めていきます。
原材料価格の高騰や地政学リスクなどの不安定な要素が懸念されていますが、当社はイリジウム・ルテニウムのリーディングカンパニーとして、しっかりと供給責任を果たしてまいります。
今後のフルヤ金属についてお聞かせください。
イリジウム・ルテニウムのスペシャリストとしてさまざまな分野で技術の進展に取り組んでいきます。
当社は、2023年6月期を初年度とする3年間の中期経営計画を策定し、企業価値の向上に取り組んでいます。事業の5本柱〔ケミカル(化成品と回収精製の2つの柱)、薄膜、サーマル、電子〕それぞれで成長ドライブとなる新しい技術・高付加価値製品を開発していくことで成長を加速させていきます。
当社の企業価値は、イリジウム・ルテニウムのスペシャリストとしてデジタル社会の進展とグリーン社会への転換に貢献していくことであると捉え、さまざまな分野で技術の進展に取り組んできました。例えば半導体関連では、半導体製造装置メーカーの要望に応えて、大量の電気を使っていた工程の電気使用量を大幅に削減する温度管理関連製品を開発しました。
他にも、廃液などの発生がない環境負荷の少ない粉末スパッタリングの用途を拡大する革新的な量産装置の共同開発、従来は大量の電気を使用していたガラス溶解を5分の1程度の電気代で可能にするイリジウムを使ったガラス溶解装置の開発、自然エネルギーを水素に変える水電解触媒の実用化の鍵となるイリジウム及びルテニウムターゲットの開発など、数多くの開発案件を進めており、そのために必要な工場の拡充などの設備投資も行っています。
また、イリジウムは生産量が限られており、価格も高止まりしています。このイリジウムが少量でも機能を発揮できるようにしたのが、京都大学の北川教授が開発したナノ合金技術です。当社はこのナノ合金の量産化におけるトップランナーとして、リサイクルも含めた希少資源の有効活用に貢献してまいります。
第56期は売上高53,600百万円、経常利益10,900百万円を目指してまいります。なお、配当につきましては256円を予定しております。次世代の産業ニーズに応え、環境や持続型社会に貢献する企業として、着実に成長してまいります。