2014年02月06日
イリジウム合金の摩擦攪拌接合ツールを世界で初めて製品化 2月7日から販売開始
融点2,600℃以上の金属でも接合可能、摩擦攪拌接合の課題であった「高温強度と高靭性の両立」を実現 自動車・鉄道・航空宇宙・エネルギーなどの製造分野における鋼材どうしの接合に実用レベルで導入可能
株式会社フルヤ金属(本社:東京都豊島区、代表取締役:古屋 堯民)は、イリジウム合金の摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding、以下FSW)ツールを世界で初めて製品化し、2014年2月7日から販売を開始します。
本製品は、融点が 2,600℃以上の金属でも接合できるという高温強度を持ちながら、靱性(※1)に優れた FSW ツールで、イリジウムに微量元素を添加した合金材料です。従来の FSW ツールでは、被接合材の融点が高すぎて接合できなかったモリブデン(融点 2,623℃)や酸化物分散強化白金合金(融点約 1,860℃)のほか、鋼材全般(炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼)やチタンなどの金属を接合することができます。

FSWは、先端に突起の付いたツールを高速回転させながら金属の接合部分に押しつけ、金属を溶かさずに摩擦熱で軟らかくして接合する接合方法です。接合温度は被接合材の融点にまで達しないため溶接と比べて変形が少なく、継手の結晶粒が微細化されることにより接合部の強度低下が小さいため、次世代の接合技術として注目されています。
現在、FSWはアルミニウムやその合金を接合対象として、接合の信頼性が要求される自動車や鉄道車両、航空宇宙分野などですでに実用化されていますが、一方で、金属の生産量の大半を占める鋼材どうしのFSWについては、研究開発段階です。鋼材のように融点や高温強度が高い材料をFSWするためのツールとしては、ニッケル系やコバルト系などの金属系ツールのほか、セラミックス系では多結晶立方晶窒化硼素(PCBN)や窒化珪素のツールが開発されています。セラミックス系ツールは優れた高温硬度を発揮しますが、一方で、靱性が低く接合時に破損しやすいことや、摩耗後に使い捨てるため、ランニングコストが高くなるという問題もあります。
そこで、フルヤ金属では、高温特性に優れ、繰り返し使用が可能な実用性に優れたイリジウム合金ツールを開発しました。本製品の主な特長は以下の通りです。
①耐熱性
本製品は、再結晶温度が約 1,500℃であるため、鋼材を接合する温度域(1,200℃以下)ではツールが再結晶を起こすことがありません。本製品を使うことで、鋼材やチタン、酸化物分散強化白金合金のほか、融点が鉄よりも 1,000℃以上高いモリブデンのFSWも可能です。
②耐摩耗性
FSWツールは被接合材との摩擦により熱を発生させるため、ツールには高温における耐摩耗性が要求されます。本製品は 1,200℃の高温でもビッカース硬さ(Hv)が約 300Hv という硬度を有しており、ステンレス鋼(SUS304)の接合実験でも、FSW前後でほとんど形状変化しないという高い耐摩耗性が確認されています。本製品の高温硬度は鉄やニッケル、チタン、ステンレス鋼の室温における硬さ(200Hv 以下)よりも硬いという機械的特性を持っています。
③耐酸化性
イリジウムは高温において優れた耐酸化性を有しており、大気中 1,200℃の高温下でも酸化減耗や酸化物の生成による重量変化を示さないことが確認されました。
④靱性
セラミックス系のFSWツールは、優れた高温強度を持つ一方、靱性が3.5~6.5メガパスカルメートル1/2 乗(MPa・m1/2)位と低く、接合時に破損しやすいことが問題でした。本製品の靱性は約10 MPa・m1/2で、従来の金属系 FSW ツールと同等以上の靱性を有しています。高温での強度と靱性の両方を併せ持つため、高融点の金属でも安定して接合することができます。
⑤繰り返し利用が可能
セラミックス系ツールは、破損した場合、破棄してツール全体を交換する必要があるため、コストが高くなるという問題がありました。一方、本製品は靱性が高いため、破損する恐れが低いという利点を持ちます。さらに、摩耗の度に鉛筆を削るように先端部分を再加工できること、また最終的に使用済になった製品についても、当社独自の精製技術で高純度原料に再生することができることから大幅にランニングコストを抑えることができます。
⑥実績(実験ベース)
本製品を用いた FSW では、板厚 1.5 ㎜のステンレス鋼(SUS304)を 75 メートル接合した実績があります。その他、モリブデン板厚2 ㎜、酸化物分散強化白金合金板厚1.5 ㎜、チタン(TP340)板厚4 ㎜、低炭素鋼(SN490B)板厚12 ㎜、軟鋼(SS400)板厚6 ㎜、高炭素鋼(SK5M) 板厚2 ㎜、6 ㎜などの接合実績があります。ツールサイズと装置の能力次第で、更に厚い板の接合も可能です。
なお、当社研究開発部は、大阪大学 接合科学研究所の藤井教授ととともに、2013年に溶接・接合の世界最高峰誌である英国の「Science and Technology of Welding & Joining」(STWJ)に発表したイリジウム合金ツールに関する論文について、このほど同誌の「2013 年 Best Paper Award(論文賞)」を受賞しました。
論文名:「Development of high strength Ir based alloy tool for friction stir welding-FSW向け高強度イリジウム基合金の開発」
フルヤ金属では、本製品を幅広い製造分野に対して提案し、3年後には年間で3億円の売り上げを目指しております。
(※1)靱性…破壊に対する抵抗値のことで、靱性が低いほどもろくなり、壊れやすくなる。
■参考資料



株式会社フルヤ金属 会社概要
フルヤ金属はプラチナ(Pt)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)などのプラチナグループメタル(PGM)に属する希少価値の高い貴金属を原料とする工業用貴金属製品を製造しています。これらの貴金属は加工が極めて難しいため、世界でもPGMに特化した工業用貴金属メーカーの数は限られています。PGMを中心とする工業用貴金属は、耐熱性、化学的安定性、良導電性などの優れた特性から、エレクトロニクスや光学ガラス、クリーンエネルギー、環境、医療など各分野の発展を支える重要な使命を受けた素材といえます。当社は、貴金属の中でも特に優れた性質を有する PGM に特化し、ルツボ(耐熱性容器)、薄膜素材、熱電対(測温計)などの工業用貴金属製品を製造販売しております。
本社:東京都豊島区南大塚 2-37-5 MSB-21 南大塚ビル
代表:代表取締役 古屋 堯民
創業:1951 年 3 月 設立:1968 年 8 月 22 日
資本金:5,445 百万円 上場取引所:JASDAQ スタンダード(証券コード:7826)
従業員数:264 名(2013 年 6 月末日現在)
売上高:26,324 百万円(2013 年 6 月末日現在)
事業内容:プラチナ・イリジウムなどの工業用貴金属各種製品、測温センサーの製造・販売。
電子材料、半導体関連製品の販売。薄膜部品の製造・販売。
HP アドレス: http://www.furuyametals.co.jp/
本件に関するお問い合わせ先
株式会社フルヤ金属 経営企画部
石丸武、山口健一
TEL. 03-5977-3377 FAX:03-5977-3381
メール:ishimaru@furuyametals.co.jp 、yamaguchi@furuyametals.co.jp