誰もやらない未来を、ここから生み出す
先端アプリケーションに革新をもたらす
「AlScスパッタリングターゲット」
AIの進歩が目覚ましく、さまざまなモノが繋がる現代社会において、電子部品にはこれまで以上の高性能が求められています。とくに、「電気信号」を「動き」に変えたり、逆に力を加えて「電気」を生み出したりする部品「圧電デバイス」は、次世代通信技術に欠かせない重要な役割を担っています。フルヤ金属が開発・製造する「AlSc(アルミとスカンジウムの合金)スパッタリングターゲット」は、この圧電デバイスに革新をもたらす次世代のキーマテリアルとして注目されています。
電子部品の進化を支える「圧電性能」
「圧電」とは、圧力を加えると電気が発生し、電気を与えると力(動き)が発生する現象のことです。マイク、センサー、スピーカーなどに利用されている重要な原理で、この原理を活用した多くの圧電デバイスは、圧電薄膜材料である窒化アルミニウム(AlN)をスパッタリング法で成膜することで製造されてきました。
しかし現在、次世代の圧電薄膜材料として、窒化アルミニウム-スカンジウム(ScAlN)が注目されています。スカンジウム(Sc)をAlNに添加すると、圧電性能がAlNの数倍に増加します。つまり、電子部品の性能が大幅に向上することが期待されているのです。
AIScスパッタリングターゲットが支える未来の高速・大容量通信(5G/6G)
AlScスパッタリングターゲットで形成されるScAlN膜は、スカンジウムを添加することで波の幅が広くなるため、一度に送れる情報量が増加し、スマートフォンなどに使われる電波フィルターにおいて、5Gや今後の6Gに対応するための高周波・広帯域な高速データ通信を実現します。また、近年はスマートフォンや基地局に加えて、次世代通信インフラの中心となる NTN(Non-Terrestrial Network:非地上ネットワーク) への関心が急速に高まっています。NTNは、通信衛星・成層圏プラットフォーム(HAPS)・無人航空機などを活用し、地上ネットワークだけではカバーしきれない海上・山岳・離島・災害時のバックアップなど、あらゆる環境で通信を可能にする次世代ネットワークです。その代表例が、急拡大を続ける衛星通信サービスStarlink。Starlinkのような低軌道(LEO)衛星ネットワークは、地上通信よりも高い周波数帯を使用する傾向があり、安定した高性能フィルターの重要性がますます高まっています。
独自技術で難題を乗り越え、国内外の顧客を開拓
フルヤ金属がこのScAINに着目したのは、2011年頃のこと。スパッタリングターゲットの受託成膜を請け負っていたお客様からの依頼が最初でした。当初は研究用の小口径のターゲットが中心でしたが、次第に量産を見越した大口径ターゲットの製造が求められるようになりました。
しかし、大口径ターゲットを製造するためには、合金をつくる際、単に板状にするだけではなく、アルミとスカンジウムを均一に分散させて成形する必要があります。
そこでフルヤ金属はさまざまなアプローチを検討・研究し、これまでのルテニウムのターゲット材を製造するノウハウを活かした製造法を追求。途中、試行錯誤を余儀なくされましたが、2019年には、アルミとスカンジムを均一に分散することができ、従来の製法よりも耐久性がある割れにくい次世代圧電薄膜材料「AIScスパッタリングターゲット」の製造技術を確立しました。また、圧電性能を高めるためにはターゲット材のSc濃度を高めていく必要がありますが、当社が確立した製法は従来の製法に比べて濃度のコントロールも容易です。こうした品質と性能の向上が徐々に顧客に評価され、フルヤ金属のターゲット材は後発でありながら国内外の顧客に認められるようになりました。当社はこの製法で、2025年に特許を取得しています。
大口径かつ高密度のAlScスパッタリングターゲット
循環型ビジネスモデルの確立をめざして
AlScスパッタリングターゲットをさらに普及させていくためには、希少金属であるスカンジウムを安定的に調達することが不可欠です。フルヤ金属はルテニウムのターゲット材のリサイクル技術を確立し、「循環型ビジネスモデル」を推進しており、アルミスカンジウムでもこのビジネスモデルを展開したいと考えています。顧客が使い終わったターゲットや設備に残った材料を回収し、再活用するリサイクルを推進していくために、今後はより多くのお客様と連携を図っていく方針です。また「酸化スカンジウム」から金属スカンジウムを取り出す技術開発も国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに進めており、AlScスパッタリングターゲットの安定供給をめざしています。
次世代アプリケーションを見据えた開発を推進
フルヤ金属が開発・提供するAlScスパッタリングターゲットは、5Gや今後の6Gといった高周波・広帯域な通信性能に対応するスマートフォン向けRFフィルターなどの実現を力強く後押ししていく製品です。
こうした動きをさらに加速していくために、フルヤ金属は現在、研究機関、大学とも連携して、さらに高い性能が発揮できる材料開発を進めています。コア技術と量産技術を通じて、次世代アプリケーションの進化とエレクトロニクス産業の発展を材料面から力強く支えていきます。